年俸制と聞いて思い浮かぶのはプロ野球選手ではないでしょうか?看護師さんが働く医療業界で年俸制を導入している法人は少なく、魅力的な求人があったとしても、年俸制はなんか嫌・・・そう思って敬遠される方も多いのです。今回はその年俸制について。
ほとんどの看護師が敬遠する。
突然ですが、質問させてください!
あなたが転職を検討していて、仕事内容も、アクセスも、休日数もほぼ一緒で、すごく前向きに悩んでいる求人が2つあったとします。違うのは年収と年俸制かどうか、この2点だけ。
以下、どちらに求人の方が気になりますか?
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A、年俸500万円賞与なしの求人。
B、年収450万円賞与4ヶ月分ありの求人。
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さあ、どっちの求人の方に応募したいと思いますか?
Aの求人の方が年収は高いです。
ただし、Bの求人には賞与が4ヶ月あります。(年収450万円の中に含みます)
どのように意思決定を行いますか?
ちなみに、
これまでの多くの看護師様の転職相談を受けてきた自分自身の経験から肌感覚でお答えさせていただくと、この2パターンの求人掲載なら看護師さんは圧倒的に後者のBを選ぶ傾向が強いです。たぶん、3:7とか2:8になるんじゃないでしょうか。(可能ならアンケート取ってみたいもんですが・・・)
理由は2つあると仮説を持っています。
1つは、
年俸制のことを全然知らないから。
そもそもの年俸制のメリット・デメリットを理解する前に、聞きなれない情報についてはシャットダウンしてそうです。これはある種、もともと人間に備わっているリスク回避の性質でもあるので、看護師であるという前に、女性であるということが影響を及ぼしてそうです。男性はリターンがあるなら多少のリスクを受け入れる傾向がありますが、女性の場合はリターンよりもリスクそのものを嫌います。
また、その女性の中でも特に安定志向の強い方が看護師を目指す場合が多いので、雇用形態として世の中的にマジョリティではない年俸制は、よくわからないリスクの高いもの、他の人が選んでいない人気のないものとして、受け入れ難いのだと思います。
2つ目は、
賞与が大好きである、ということ(笑)
月給の細かい内訳どうのこうのより、賞与が何ヶ月分もらえるのか。求人票を見るときに、まず賞与に目が行く方は本当に多いと思います。(冗談抜きで、転職する時には月給がいくらか、賞与がいくらか、血眼のように探すのに、給与明細については見たこともないという方は非常に多いんです・・・)
(関連記事/給与明細って、まずはどこから見たらいいの?看護師のためのお金講座。)
賞与って、支給されたらもちろん嬉しいとは思いますが、業績によって出さない、出す必要がないってこと知ってました?
(関連記事/コロナで賞与が減った!これって、違法?)
たまに、『賞与が出るって聞いてたから入職したのには今年は減らされたんです!』と怒っている方がいますが、賞与って基本的にそんなもんですから。会社が違法行為をしたわけではありません。でも、そんなことはまだまだ知られていないことが多くて、賞与は出るのが当たり前。その賞与は金額も大きい方がいい会社!!そう思っている方が多いのだと思います。
(関連記事/みんな気になる賞与のお話。気を付けた方がいい3つのポイント。)
さて、ここからは年俸制のメリット・デメリットについて。
年俸制のメリット・デメリット。
年俸制とは、
労働者一人一人に支払う給与の金額を、「1年単位」で決める給与形態のことです。
プロ野球選手をイメージしていただければわかりやすいかもしれませんが、個人の成果や能力などを基に、翌年度に支払う給与総額を決定します。ただ、転職で1年目だと、その看護師さんのスキルやアウトプットはよくわからないため、ある程度の雇用条件をもとに面接でしっかりとすり合わせをしながら、最終的な年俸を決める形になります。
(関連記事/看護師と、プロ野球選手の意外な共通点。)
一般的な月給制と異なり、1年の給与を計算し、それを12分割で支払う、というイメージです。
例えば、
年俸500万円の求人の場合、単純に12分割したとなると、月給は41.6万円になります。
メリットは、
1年単位で給与が決まるので途中で減少がないこと。つまり、
上述したように賞与は業績に応じて不支給でも問題ないのですが、年単位での決定になるので、業績に応じての減少がないということです。これはある意味でいうと、リスクがない状態といえます。
会社の業績に関係なく、41.6万円は毎月確定、、となればこれは魅力ではないですか?
デメリットについては、1年の間に給与が減少もなければ、増加もないということです。もちろん決められた所定労働時間外の勤務が発生した場合は、超過の残業代は支払う義務が発生しますので、その部分での収入アップは可能性として存在しますが、昇給や昇格に伴う収入アップは基本ありません。賞与についても業績に応じて発生する可能性はございますが、月給制のように高い金額になることはあまりないと考えられます。
他にも細かい部分でメリットデメリットはありますが、同じような仕事・同じような雇用条件で違うのは年俸制かどうか、という部分で語ると、どっちがいい!というのは一概には言えないというのが正直なところ。
だからこそ、しっかりと情報を取得し、自分の状況ならどっちが適しているか、ということを吟味したうえで意思決定をしていただければなと思います。そういった意味においても、キャリアアドバイザーが仲介することで、その求職者様に年俸制の概要を説明し、メリットデメリットを改めて説明させていただき、より良い意思決定ができるようなお手伝いができることは価値の1つではないかと思っております。
さて、年俸制についてしっかりと理解してもらったうえで、もう一度同じ質問をしたらどうなるのでしょうか?
結果は気になりますね。ある程度、予想はできますが。
年俸制を取り入れている法人は?
そんな年俸制を導入している法人ですが、医療福祉の業界ですと、やはりまだまだ少ないというのが現状です。
少しずつ増えてきているところでいくと、訪問看護ステーションでしょうか。
ここもマインドの問題になりますが、訪問看護ステーションって、だいたい既存の病院での働き方であったりとか、患者様に対する向き合い方とか、そういったものが自分自身の考えと、病院の考えと、合わなくなってきた方が開業しているイメージが最近は強くなってきてます。(訪問看護の経営者に直接インタビューするんですが、同じような方が多いですね)
自分が信じる看護にトライして、それが売り上げにつながって、収入もアップするのなら、リスクがあってもチャレンジしたい!そう思う人って、看護業界の中でも良い意味で変わりモノですし、イノベーター理論でいうところの、イノベーターですよね。
(関連記事/病棟看護師が、訪問看護師に変わる瞬間。)
自分がそういった思いから立ち上げたステーションに共感してくれて、一緒に仕事をしてくれる人には、しっかりと成果に応じて還元したい!と思うからこそ、年俸制を導入するところも増えてきています。(とはいえ、立ち上げ当初のステーションの場合は売り上げも不透明のため設定が難しいと思いますが)
実際には、訪問看護のように裏では地道な営業活動が行われ、その結果売り上げにも反映されるような形態だと、どの従業員がどれぐらい売り上げに直結する動きをしているか、が明確になりやすいので年俸制という考え方が徐々に受け入れられてきてるのかなと思います。
(関連記事/訪問手段にイノベーション?訪問看護ステーションの今。)
一部、病院でも年俸制を取り入れているところもありますので、年俸制と見た瞬間にアレルギー反応を起こすのではなく、一度内容について確認し、ご自身でも整理したうえでご検討していただければと思います。
その方が選択肢が広がる可能性があるはずです。
いかがでしたでしょうか?
今回は主に、求職者様から見た年俸制のメリット・デメリットについて簡単にCOLUMNにしましたが、実は法人側が年俸制を導入する際のメリット・デメリットも非常に面白いんですよね。
弊社もまだ月給制ではありますが、将来的には結果にこだわるプロ野球チームのような体制にし、夢のある年俸制に移行していきたいなと考えています。
≪今回のコラム寄稿者≫
YU/SHERPA代表コンサルタント
自動車、IT、美容、金融業界のマーケティングに
精通し、29歳で医療系人材業界へ。その後、独立。
戦略的な提案で法人と個人から信頼を得る、
日本でもレアなMBA/FP保有キャリアアドバイザー。
一男一女を持ち、学生から既婚者の悩みに
共感できる、パンケーキ好きのアラフォー。