近年、訪問看護ステーションの開設が右肩上がりに増えています。その一方で決して甘い世界ではありませんので、廃業も多いのが現実。独立起業を経て倒産になった場合の元経営者の転職について共有いたします。
伸びる訪問看護業界。
ご存知の通り、訪問看護を含めた在宅分野はここ数年で伸び続けています。
2010年には、5,731件だった訪問看護ステーションの数は、10年後の2020年には11,931件とほぼ2倍に増え、2021年、2022年と止まることなく増えています。
(参照/令和3年度 訪問看護ステーション数 調査結果/一般社団法人全国訪問看護事業協会)
実際、SHERPAでも訪問看護への転職相談だけではなく、将来的には訪問看護ステーションの独立起業を検討しているという看護師様からのキャリア相談も増えてまいりました。(起業や経営のご相談もいただけるなんて、転職だけではなくキャリア支援に携われているという実感もあり光栄なことです)
(関連記事/訪問看護へ転職したい!どんな求人がオススメ?(独立したい看護師様向け)
ただ、これだけ訪問看護ステーションの新規開業が多いということは、市場においても競争が激化しているということもあり、生き残っていくのは容易なことではないと思います。エリアによってはレッドオーシャンでしょうし。
厳しい経営と倒産。
・看護師の採用が難しいこと。
・利用者の獲得が困難であること。
・経営者の経験不足。
訪問看護ステーションを経営する中で、代表的と言われる経営困難の3つの要因です。(関連記事/医療従事者がMBA取得って、どう思いますか?)
患者さんと密に関わることや、しっかりと看護することにおいては、医療のプロとして経験や知識があったとしても、看護師を採用したり、利用者獲得のために営業を行なったり、会社を経営するという経験は、最初から豊富な方なんてほとんどいません。どれも未熟なまま独立起業する場合がほとんどだと思います。まさに、走りながら考えて、経験して、会社とともに自分自身も成長していくというイメージでしょうか。
起業経営すると、会社員だった時にはそこまで感じることのなかった喜びもあります。
初めて人を採用できた時のドキドキ。社員の成長を実感できるやりがい。初めての利用者様からの依頼と初めて売上があがる感動。会社を経営していく中で、何事にも代えがたい貴重な体験もたくさんあったはず。
それでも、大変な事の方が多いかもしれません。
計画通りにいかないこともたくさんあり、想定外の出来事が起こり、受け入れることができないような理不尽なこともあり、いろんな不運が重なることがある。
折れそうな心を、首の皮一枚だけ繋ぎ止め、何度も何度も起き上がり、歩みを止めなかった毎日。
それでも仕方なく、自分で産んで・育ててきた我が子のようなステーションを、会社を、信じて付いてきてくれたスタッフさんや、依頼してきてくれた利用者様を、泣く泣く諦めざるを得ない状況になってしまった看護師様(理学療法士様)も、いるのではないでしょうか。
自らが起業している場合は、日本政策金融公庫等の金融機関から1,000万円前後の借り入れを行なっている場合も、多々あるかと思います。運転資金の追加融資を行なっている場合もあれば、数千万円になることも。倒産・廃業ということになれば、実際にはすべて返済が終わっている状態ではなく、今後も返していくのか。それとも返済免除の手続き(自己破産など)をするか、税理士や弁護士とも、本当に厳しい厳しいご相談をされ、夜も寝れない経験をされている方もおられます。
元経営者の転職。
そういった元経営者の看護師様は、今後どういったキャリアを歩むのでしょうか。
1つの選択肢として多いのは、
正社員として転職するというものです。
これにはメリットがあり、1つは給与所得という形で安定した収入の形を作ることができる点。
実際、訪問看護ステーションを立ち上げた経営者は、社長という肩書きから、一般の訪問看護のスタッフよりも高給のイメージがあるかもしれませんが、実際には真逆のケースもあります。社員には黙ってることもあるかと思いますが、経営が軌道に乗るまでは役員報酬なんてほんの数万円で設定して、その辺の高校生のバイトよりも収入が低い、、なんてこともザラにあります。そんな状態で会社経営を行い、借入金を返済していっているのです。
そういった経済的なプレッシャーを何年も背負っていると、給与所得という形で、一定数の給与が安定して入ることはメンタル的には大事なことだと思います。
ただ、問題は元経営者の看護師という経歴。このレアな経歴を持って転職できるのかどうか、ですよね。
これは経営者を経験しないと実感しにくいのですが、元経営者が面接に来た場合、採用だったり雇用だったりのハードルが上がる場合があります。
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・元経営者だからプライドが高そう。
・元経営者だから色々経営に口出しそう。
・元経営者だから給料も高く要求してきそう。
,,,,,etc
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実際、このように思う採用担当者や経営者も少なからず存在します。というか、けっこう多いでしょうね。
ただ、逆に言えば、自分でリスクを背負って、身銭を切って、起業したり経営をしたり、そういった経験をしているからこそ、そんな人に来て欲しい、力を貸して欲しい、一緒に仕事しよう。そう思う採用担当者、経営者も、きっといるはずです。
誰にも言えない、誰にも相談できなかったような、悩みやストレス、課題、いろんなことを抱えていたはずです。そういった特別な、経験や学びを活かす職場で仕事ができるなら、きっと良いリスタートになる気がしませんか?
実際、そういった元経営者を欲する求人の場合は、管理職だったり、管理職候補だったりするので、雇用条件も悪くありません。臨床経験だけではなくマネジメント経験もある方なんて、そう多くありませんから、年収も500万円以上も珍しくないです。なので、転職という選択肢も現実的になってきます。
そもそも訪問看護をやりたいと思う人なんて、看護師の中でも4%前後ですよ?
(参照/看護統計資料室 /公益社団法人 日本看護協会)
すごいチャレンジャーで、すごいハングリーな人ばっかりです。普通に転職相談で話をしてるだけでも、節々に感じることができます。目の色が違うし、マインドも違います。
その4%の中で、独立起業する人なんて、もっと少ないはずで、もうチャレンジャーとかハングリーを通り超して変人ですよ。(笑)
そんな変人の看護師さんを放っておかない職場があるはずです。もし、よかったらご紹介いたします。そして、一緒にリスタートできる方法を探していきましょう。
(関連記事/信頼できるエージェントの見分け方。)
≪今回のコラム寄稿者≫
YU/SHERPA代表コンサルタント
自動車、IT、美容、金融業界のマーケティングに
精通し、29歳で医療系人材業界へ。その後、独立。
戦略的な提案で法人と個人から信頼を得る、
日本でもレアなMBA/FP保有キャリアアドバイザー。
一男一女を持ち、学生から既婚者の悩みに
共感できる、パンケーキ好きのアラフォー。